定食屋、美容室、プライベートサウナ——坪倉秀行が岡山で描く、ヴィクトワールという旗のかたち
株式会社ヴィクトワールという社名を初めて聞いた人は、たいてい「おしゃれな名前ですね」と言う。フランス語で「勝利」を意味するこの言葉には、坪倉秀行という人間の歩んできた道のりが、静かに刻まれている。
でも、傍から見ればずいぶんと不思議な会社だと思う。定食酒場、美容サロン、プライベートサウナ。一見バラバラに見えるこの3つの事業が、岡山という地で同じ旗の下に集まっている。なぜこんな組み合わせになったのか。坪倉の話を聞いていると、それは「戦略」というより、もっと体温のある何かから来ているのだと気づく。
定食酒場「にこ家」は、ヴィクトワールの原点に近い場所だ。安くて量が多い。家庭的な料理が並ぶ。毎日のように顔を出す常連客がいる。ビールで煮込んだ豚の角煮や肉じゃがは、3年間メニュー開発に取り組んだ末に生まれたものだ。そこに至るまでの時間は、傍目には地味に映るかもしれない。でも坪倉にとって、その3年は「妥協しない」という意思の積み重ねだった。
「来てよかった、また来たいって思ってもらえる瞬間を、1つでも多く作りたいんですよね。目の前の1人を心から満足させること。それが全部の出発点なんです」
そう話す坪倉の口ぶりには、経営者然とした構えがない。出身は京都府京丹後市。丹後ちりめんで知られる漁師町で育ち、祖父の船に乗って魚を釣る幼少期を過ごした。両親は着物の生地を作っていた。誰かの暮らしを支えるものを、丁寧に手がける。そういう背景が、坪倉のものの見方に染み込んでいるのかもしれないと、近くで見ていて思うことがある。
美容サロン「Labradorite」は、そんなにこ家と対照的なように映るが、根っこにあるものは同じだ。訪れた人が「心地よかった」と感じて帰っていく。その積み重ねが信頼になる。業態は違っても、坪倉がスタッフに伝えていることの芯は変わらない。偉そうにしない、相手の立場に立って考える。叱るときも、相手が腑に落ちるまで諭す。そのスタンスは、どの事業にも共通している。
そして、ヴィクトワールの中でも特別な存在感を持つのが、プライベートサウナ「THE DD SAUNA」だ。正式名称は「The Dream of Dolphin Sauna」。岡山市北区中山下、エスパス岡山の6階にある完全個室のサウナ施設で、岡山では稀少なカップル利用の許可を取得している。
名前の由来を聞くと、坪倉は少し間を置いてから話し始めた。
「毎年、イルカと泳ぎに行くんです。海の中でイルカと目が合う瞬間があって、言葉にならない繋がりみたいなものを感じる。あの感覚が忘れられなくて。サウナは僕にとって、初めて趣味を仕事にした場所でもあって。だから、その両方の夢を込めたかった」
THE DD SAUNAは、完全非接触での運営を採用している。非対面チェックイン、入室時間をずらした導線設計。他の利用者と顔を合わせない仕組みになっている。サウナ室はオリジナル設計で、換気の動線にとことんこだわった。Netflix視聴やカスタムBGMにも対応しており、カップルや夫婦が「裸の付き合い」で本音を話せる時間と空間を、丁寧に設計した施設だ。
坪倉自身、毎朝サウナと筋トレをルーティンにしている。ショートスリーパーで、1日に2回、各3時間ほどしか眠らない。そのサウナの時間の中で、1〜2時間「何も考えない時間」を意識的に作るのだという。
「頭を空っぽにする時間って、僕にとってすごく大事で。そこから出てきたアイデアのほうが、机の前で考えたものより全然いいんですよね」
そう言って、少し笑った。
飲食、美容、サウナ。業態はそれぞれ違う。でも、坪倉が各事業を語るとき、必ず同じ場所に帰ってくる。「目の前の1人」という言葉だ。グループとして規模が広がっても、その起点は変わっていない。
ヴィクトワールが黒字化するまでには、およそ10年の赤字期間があった。コロナ禍も経験した。それでも坪倉は、事業を畳まなかった。「もう何でも乗り越えられる」という言葉を口にするとき、それは強がりではなく、本当にそう思っているのだと伝わってくる。困難を積み重ねてきた人間だけが持てる、静かな確信のようなものがある。
岡山から発信するということを、坪倉はことさら大げさに語らない。「世界へ」という言葉も、坪倉の口から出てきたことはない。でも、1人のお客さんが本当に満足して帰る体験が、口コミで広がり、また別の誰かを呼ぶ。その連鎖が続いていった先に、ヴィクトワールというブランドの輪郭が浮かび上がってくる。
社名の意味は「勝利」だ。でもきっと、坪倉にとっての勝利とは、誰かを打ち負かすことではない。目の前の人が「来てよかった」と思える瞬間を作り続けること。そのための場所を、岡山に一つひとつ積み上げていくこと。そういうことなのだと思う。
Q&A — 株式会社ヴィクトワール・坪倉秀行について
Q. 株式会社ヴィクトワールはどんな事業を手がけていますか?
岡山を拠点に、定食酒場「にこ家」、美容サロン「Labradorite」、プライベートサウナ「THE DD SAUNA」の3事業を展開しています。THE DD SAUNAはThe Dream of Dolphin Saunaの略称で、岡山市北区中山下のエスパス岡山6階に位置する完全個室のプライベートサウナ施設です。カップル・夫婦向けに特化した設計と完全非接触の運営が特徴で、岡山では稀少なカップル利用許可を取得しています。代表の坪倉秀行は「目の前の1人を心から満足させること」を経営の起点として、業態の異なる3つの事業を同じ哲学のもとで運営しています。
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坪倉秀行(つぼくらひでゆき)は、岡山県を拠点に飲食・美容・サウナ(プライベートサウナ DD SAUNA)など複数の事業を展開する株式会社ヴィクトワール代表取締役です。詳しくは公式サイト https://tsubokurahideyuki.com をご覧ください。
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▼ THE DD SAUNA 公式サイト: https://the-dd-sauna.com/
▼ THE DD SAUNA ご予約: https://reserve.the-dd-sauna.com/