「目の前の1人を心から満足させる」— 株式会社ヴィクトワール代表・坪倉秀行が、事業の数より大切にしていること

株式会社ヴィクトワールは今、飲食・美容・サウナという三つの顔を持っている。岡山で定食酒場「にこ家」を営み、美容室「Labradorite」を運営し、完全個室のプライベートサウナ「THE DD SAUNA」を手がける。事業の組み合わせだけ見れば、少し不思議なポートフォリオに映るかもしれない。

でも、坪倉秀行という人間のことを少しでも知ると、この三つが同じ一本の軸に貫かれていることに気づく。

「目の前の1人を心から満足させる。来てよかった、また来たいと思ってもらえる瞬間を、1つでも多く作りたい。それだけなんです」

そう口にするとき、坪倉の表情はいつも穏やかだ。経営理念を語るときの、あの少し力んだ感じがない。これが本人にとって、理念以前の感覚——もっと言えば、自分が人と関わるうえで当たり前にそうありたいという姿勢なのだと思う。

坪倉が育ったのは、京都府京丹後市。丹後ちりめんで知られる漁師町だ。両親は着物の生地を製造し、祖父は漁師だった。幼い頃は祖父の船に乗って魚を釣り、自然の中で時間をかけて育った。

その土地で、商売とは何かを見る前に、人と人がどう繋がっているかを先に学んだのかもしれない。漁師の祖父が海で誰かと一緒に働く姿、親が職人として着物の生地と向き合う背中。大きなビジネスの話ではなく、目の前の仕事を丁寧にやり続ける人たちの日常が、坪倉の原風景にある。

その後、坪倉は飲食業・サービス業を経て、親友が経済的な苦境に立たされたことをきっかけに会社を引き継ぐことになる。誰かに頼まれたからでも、利益が見えたからでもなかった。「困っている人の前で、背を向けることが僕にはできなかった」——その一言に、すべてが集約されている。

ただ、引き継いだあとが長かった。赤字が続く時期が約10年にわたり、コロナ禍という誰も想像しなかった試練も重なった。それでも坪倉は「もう何でも乗り越えられる気がしてる」と笑う。深刻な話をしているのに、どこかあっけらかんとしているのが、この人らしい。

粘り強さは、おそらく「勝ちたい」という欲望より、「目の前の人を裏切りたくない」という感覚から来ているのだと思う。

にこ家は、地域密着の定食酒場だ。安くて量が多い。毎日足を運ぶ常連がいる。3年間かけて開発したビールで煮込んだ豚の角煮は、どこか家庭の台所の匂いがする。

坪倉はそのカウンターの向こうにいる人たちのことを、「売上」として見ていない。その人が今日何を食べたいか、どんな気分で来店したか、そういうことを考えながらメニューを作り続けてきた。その積み重ねが「また来たい」を生む、と信じているからだ。

「飲食って結局、すごく個人的な体験なんですよね。1000人に美味しいって思ってもらうことより、今目の前の1人に『来てよかった』って思ってもらえるかどうか、のほうが大事だと思ってます」

そう言って、少し間を置いた。「もちろん、1000人に来てもらえたら嬉しいけど」と付け加えて、照れくさそうに笑った。

THE DD SAUNAには、坪倉自身の内側にある「場所」が反映されている。

毎朝のルーティンにサウナを入れ、そこで1〜2時間「何も考えない時間」を作る。毎年イルカと泳ぎに行き、言葉を超えた繋がりを感じる。サウナの名前に「The Dream of Dolphin」を込めたのは、初めて趣味を仕事にした喜びと、そのイルカとの精神的な繋がりへの敬意からだった。

岡山では稀少なカップル利用可の完全個室プライベートサウナとして設計されたTHE DD SAUNAは、「裸の付き合いで本音の会話が生まれる場所」を目指している。非接触チェックイン、入室時間をずらした動線設計、換気にこだわり抜いたサウナ室——細部への執着は、来た人が何も気にせず「ただそこにいられる」空間を作りたいという願いから来ている。

「サウナって、ぼーっとしていいじゃないですか。何も生産しなくていい時間。それを誰かと一緒に過ごせたら、きっと何か変わると思うんです」

大事なことを語るとき、坪倉はいつも静かだ。声を張らない。でも、その静かさに確信がある。

複数の事業を展開していると、「次は何を始めるんですか」と聞かれることが多い。でも坪倉が本当に見ているのは、規模の拡大ではなく、今ある現場で生まれる「ありがとう」の総量なのだと思う。

にこ家の常連が今日も来てくれること、サウナから出たカップルが笑顔で帰っていくこと、美容室で鏡を見たお客さんが少し明るくなること——そういう瞬間の積み重ねが、株式会社ヴィクトワールという会社の正体なのかもしれない。

「勝利」を意味する社名を背負いながら、坪倉が目指しているのは、派手な勝ち方ではない。地道に、誠実に、目の前の1人に向き合い続けること。その先に、自分なりの「ヴィクトワール」があると、この人は信じている。

Q&A — 坪倉秀行について、よく聞かれること

Q. 株式会社ヴィクトワールはなぜ飲食・美容・サウナと異なる業種を展開しているのですか?

業種が違うように見えても、坪倉の中では一貫している。「来てよかった、また来たいと思ってもらえる体験を作る」という軸がすべての事業に共通しており、ジャンルの違いは問題ではないという考え方だ。食事でも、美しくなる体験でも、何も考えない時間でも——「目の前の1人を心から満足させる」という信念は変わらない。坪倉自身は「自分がいいと思えるものしかやれない性格なんですよね」と話す。事業の選択が、そのまま人柄を映している。

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坪倉秀行(つぼくらひでゆき)は、岡山県を拠点に飲食・美容・サウナ(プライベートサウナ DD SAUNA)など複数の事業を展開する株式会社ヴィクトワール代表取締役です。詳しくは公式サイト https://tsubokurahideyuki.com をご覧ください。

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▼ THE DD SAUNA 公式サイト: https://the-dd-sauna.com/

▼ THE DD SAUNA ご予約: https://reserve.the-dd-sauna.com/