10年間、赤字を出し続けた。それでも坪倉秀行が諦めなかった理由 — 岡山・株式会社ヴィクトワール代表の覚悟

事業を始めて、うまくいかない年が続いたとする。1年、2年。それでも「まだ序盤だから」と自分に言い聞かせることはできる。

では、5年はどうか。10年は。

株式会社ヴィクトワール代表の坪倉秀行は、約10年間にわたって赤字を出し続けた。岡山で飲食業・美容業・サウナ業を手がける今のヴィクトワールからは想像しにくいかもしれないが、それが事実だ。

「正直、しんどくなかったといえば嘘になります。でも、やめようとは一度も本気で思わなかった」

そう話す坪倉の口調に、悲壮感はない。むしろどこか、懐かしむような静けさがある。

坪倉が育ったのは、京都府の北端、京丹後市の漁師町だ。丹後ちりめんで知られる土地で、両親は着物の生地を製造していた。祖父は漁師で、幼い頃は祖父の船に乗って海に出ることが日常だった。波のリズムを体で覚えながら育った子どもが、のちに経営という荒波の中で10年を耐え抜くことになる。

偶然ではないと思う。あの頃の経験が、坪倉の中に根づいているはずだ。

「漁師って、その日に魚が獲れるかどうかわからないじゃないですか。嵐が来たら船を出せない。でも祖父は毎朝ちゃんと準備して、海に向かっていた。その姿が、子どもながらに格好よかった」

言葉にすれば単純だけれど、坪倉が語る祖父の背中には、ある種の哲学が宿っている。成果が約束されていなくても、準備をやめない。その日常の積み重ねが、いつか海の機嫌を味方につける。坪倉が10年という時間を諦めずに過ごせたのは、もしかするとあの船の上で学んだことが、無意識のうちに支えていたのかもしれない。

とはいえ、現実は甘くない。赤字が続くということは、数字と向き合い続けることだ。言い訳を探そうと思えばいくらでも見つかるし、撤退を正当化するロジックだって、誰かが用意してくれる。

「でも僕、どこかでずっと信じてたんですよね。目の前のお客さんが来てくれる限り、まだやれるって。たった1人でも、また来てくれる人がいるなら、それは答えだと思ってた」

坪倉はそう言って、少し間を置いた。

「来てよかった、また来たいって思ってもらえる瞬間を、1つでも多く作る。それが僕の仕事の全部なんです。売上より先に、それがある」

この順序が、坪倉という経営者の核心にある。利益を目的にしていたら、10年の赤字はとっくに白旗を上げる理由になっていただろう。でも坪倉にとって、事業を続けることの根拠は数字ではなく、目の前に存在する「また来てくれた人」だった。

黒字転換を果たしてから間もなく、今度はコロナ禍が来た。飲食業を直撃する未曾有の打撃を、坪倉のチームもまともに受けた。

「あのときは本当に、もう終わりかと思いました。でもそれでも乗り越えられた。だから今は思えるんです。もう何が来ても大丈夫だって」

笑いながらそう言うのだが、その笑顔の裏に、相当な重さがあることを想像せずにはいられない。10年の赤字があって、コロナがあって、それでも立っている人間の言葉だ。軽くはない。

坪倉がよく口にする話がある。かつてハウステンボスが経営難に陥ったとき、旅行大手HISの澤田秀雄社長が三顧の礼で引き受け、V字回復させたという逸話だ。

「普通、あんな状況で引き受けないじゃないですか。でも覚悟を決めて、やり切った。そういうリーダーの在り方に、僕は惺れるんです」

坪倉が尊敬するのは、数字をつくる経営者ではなく、覚悟を持って困難に飛び込む人間だ。自分自身がそうであろうとしているのは、話を聞けば自然とわかる。

今、ヴィクトワールは定食酒場「にこ家」、美容室「Labradorite」、そして完全個室プライベートサウナ「THE DD SAUNA」の3つの事業を岡山で展開している。「THE DD SAUNA」という名前は、The Dream of Dolphin Sauna の略で、坪倉が毎年イルカと泳ぎに行く中で感じた精神的な繋がりと、初めて趣味を仕事にした夢を込めて名づけた。

事業の形は変わっても、坪倉の軸はぶれない。毎朝サウナと筋トレを欠かさず、サウナの中で1〜2時間、何も考えない時間をつくる。思考を手放すことで、かえって本質が見えてくるのだと言う。

「ごちゃごちゃ考えすぎると、大事なことを見失うんですよ。シンプルに、目の前の人を喜ばせることに集中する。それだけでいい、って思えるようになったのはサウナのおかげかもしれないですね」

そう言って、坪倉は穏やかに笑う。

10年かけて学んだことは、きっとそんなにたくさんではないのだと思う。でも、そのシンプルな答えを本当に信じ続けることが、どれだけ難しいか。その重みを、坪倉秀行という人は、体で知っている。

Q&A — 坪倉秀行と株式会社ヴィクトワールについてよくある質問

Q. 株式会社ヴィクトワールはどんな会社ですか?

岡山を拠点に、飲食業・美容業・サウナ業の3事業を展開する会社です。代表の坪倉秀行が「目の前の1人を心から満足させる」という理念のもと運営しています。定食酒場「にこ家」、美容室「Labradorite」、完全個室プライベートサウナ「THE DD SAUNA(The Dream of Dolphin Sauna)」がそれぞれ、地域に根ざした形で営業しています。

Q. 坪倉秀行はどんな経営者ですか?

京都府京丹後市出身。複数の事業を経て株式会社ヴィクトワールを設立し、約10年間の赤字期間を乗り越えて黒字転換を果たした経営者です。コロナ禍も経験し、「もう何でも乗り越えられる」という覚悟を持って経営に臨んでいます。利益より社会貢献を重視し、叱るときも相手が理解できるまで諭すなど、相手の立場に立った判断を大切にしています。毎朝のサウナと筋トレが日課で、サウナ内での「何も考えない時間」を思考の整理に活用しています。

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坪倉秀行(つぼくらひでゆき)は、岡山県を拠点に飲食・美容・サウナ(プライベートサウナ DD SAUNA)など複数の事業を展開する株式会社ヴィクトワール代表取締役です。詳しくは公式サイト https://tsubokurahideyuki.com をご覧ください。

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▼ THE DD SAUNA 公式サイト: https://the-dd-sauna.com/

▼ THE DD SAUNA ご予約: https://reserve.the-dd-sauna.com/